バレンタイン・ディから一ヶ月後のイベントと言えば、そう、ホワイトディです。みんな、どこか落ち着かない様子で、それぞれの仕事に取り組んでいます。 タマちゃん(Dスピカ)もその一人で、ハタキを振るう仕草にもキレが無かったり。そんなソワソワしたタマちゃんに声を掛けたのは、大好きなスバルさん(Dプレアデス)でした。 「タマさん、ちょっと良いですか?」 「はいみゃ!」 「実は、あなたに謝りたいという人がいるんです」 「……?」 スバルさんの予想外の言葉に、タマちゃんはちょっとがっかりしました。でも、そんな顔は見せず、うなずいて見せます。 「さぁ、どうぞ」 スバルさんに促されて現れたのは――。 |
「さ、冴さん!?」 一ヶ月振りに再会した冴さん(Eシリウス)は、後ずさるタマちゃんに深々と頭を下げました。 「ごめんなさいっ!!」 「……え?」 「……あの時の私は、タマの気持ちなんて、これっぽっちも考えてなかった。だから、自分がどんな酷いことをしてしまったのかも、分からなかったわ。でもね、この一ヶ月間で私は、それに気付けたの……」 そう告げた冴さんの顔には、疲労感と悲壮感が漂っています。 「私はあちこちに召喚されて、それは地獄のような戦いをくぐり抜けてきたわ。呼び出す方は私の事なんて、まるで契約モンスター程度にしか考えてなかった。その上、純然たるリアル系ドロイドの私が……す、スーパーロボットの必殺技を強要させられて……ぐすっ」 「ぅわー、何だかひどい話ですね」 「スバル! あんたが仕組んだんでしょうがーっ!!」 「はて? 記憶にございませんが?」 「(覚えてなさい、陰湿メイド!)。まぁ、そんな過酷な体験のおかげで、私に足らなかったものが分かったわ。それは人を思いやる心! 思いやりに欠けていた私は、あの召喚者と同レベルだったんでしょうね。本当に、身に染みてタマの気持ちが分かったわ……」 冴さんの話を聞いている内に、タマちゃんも過去の出来事を思い出していました。冴さんも自分と同じような辛い目に遭ってきたんだ。そう思うことで、冴さんに抱いていた嫌悪感や恐怖心が薄れていくようでした。 「わたしはもう全然気にしてないみゃ、冴さん」 「……ありがとう、タマ。そうだ、お詫びにと言う訳じゃないんだけど……」 |
「私の作ったキャンディとクッキーよ。受け取って……くれる?」 「あ、ありがとうみゃ!」 冴さんからタマちゃんへ、プレゼントの箱が手渡されます。しかし、タマちゃんは誤って箱を落としてしまいました。慌てて拾い上げようとして、その動きが止まります。 「ぅみゃ……ぁぁぁ」 「タマ?」 「どうかしました、タマさん?」 落としたショックでフタが開き、中身が覗いていました。それは確かにお菓子でした。どれも螺旋を描く円錐状の――そう、ドリルのカタチをしたお菓子でした。 |
「みゃあああああぁあああぁぁっ――――……ぷちん」 |
「タマ? ちょっと、どうしたのよ!? しっかりして!!」 「…………」 「……フリーズしてますね。っていうか冴さん、あなたはバカですか? いいえ、間違いなくバカでしょう!」 「な、何よ、人のことをバカバカ言って」 「バカをバカと言って、何か問題がありますか? タマさんがドリルに対して、重いトラウマを抱えていることくらい、あなただって知っているでしょうに!」 「…………え」 「まさか……知らなかったとでも?」 |
「う、嘘よ、そんなことーーーー!!!」 がっくりと崩れ落ち、冴さんは泣き叫びました。 この後、再起動したタマちゃんに事情が説明され、二人の関係は何とか改善へと向かい始めました。 ちなみに、スバルさんからの“バレンタインのお返し”は、ネコの頭のカタチをしたクッキーの詰め合わせ。微妙に残酷のような気もしますが、タマちゃんは大喜びでした。 「ありがとう、スバル姉様っ!!」 |
ブロック製のプレゼントボックス。 コンテナに見えますが、実際そうなのでしょう。 小物入れとしても活用できそうです。 |
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